リスク/チャンス対応策

リスク対応策

回避

リスク原因を取り除いたり、そのリスクがプロジェクトに影響しないように、プロジェクトの方を変更すること。
【例】

  • 客先の要求を明確化し、不明瞭な要件をなくす
  • 技術者間コミュニケーションを改善し、コミュニケーションエラーが発生しないようにする
転嫁(移転)

リスクを第三者に負ってもらうことで、リスク発生時の損失を第三者に補填させること*1
なお、転嫁をする場合は基本的には、第三者に(主に金銭的な)対価を支払う必要があるため、この金銭的コストが新たなリスクになる(二次リスク)。
【例】

  • 納入遅延に伴う違約金を補償してくれる保険に加入する
  • 協力会社の技術者がスキル不足であった場合、別のスキルの高い技術者と交代できるよう契約する
軽減

リスク発生時の影響の大きさを低減させること。
【例】

  • 簡潔な構造を採用し、リスクが発生した時に対処しやすいようにしておく
  • テスト回数を増やし、できるだけ不具合を洗い出せるようにしておく
受容

以上3つの対策を取らないことを「リスク受容」と言い、リスクが発生した時にそれを受け入れること。
このリスク受容には以下の2種類がある。

  1. 積極的リスク受容
  2. 消極的リスク受容

積極的リスク受容とは、リスク受容の事前準備をしておくことである。具体的には、代替計画(コンティンジェンシー計画)の準備や、予備予算の確保などである。
消極的リスク受容とは、つまり何も事前準備をせず、リスクが発生した時に対応策を考えることである。

上記4つのどれが最適かはケースバイケースである。リスクの発生確率、影響度合い、手持ちのリソーセス(人的・時間的・金銭的)に応じて、決めなければならない。場合によっては何もしない(消極的リスク受容)が最適であることもある。
また、リスク内容が既知なのか未知なのかも関係する。すなわち、既知のリスクであれば、それを回避したり軽減することができるが、未知のリスクに対しては基本的には転嫁と受容しか対策することができない。転嫁する場合でも、保険や契約内容にはスコープがある程度存在するはずなので、本当の未知のリスクへの対策はせいぜい予備リソーセス確保による積極的リスク受容くらいしかない。

チャンス対応策

活用

チャンスの原因となるものを引き寄せたり、チャンスの影響がプロジェクトに波及するようにすること。
【例】

  • 能力の高い人材・機材などを導入する
  • 流行りの技術を導入(インターネットやビッグデータ)したり、成長著しい市場に参画する*2
共有

三者と協力することで、チャンス発生確率を高めたり、新たなチャンスを引き寄せたりすること。
【例】

  • 他社との協業
強化

チャンス発生時の影響を高めること。

受容

チャンス受容とは、何もせず、チャンスが到来した時にそれを受け入れることである。

表にまとめると以下のようになる。

リスク チャンス
発生確率 回避 活用
三者 転嫁(移転) 共有
影響 軽減 強化

*1:余談であるが、「リスク転嫁」と「責任転嫁」は別物である。例えば、リスクがあるモジュールの責任部署を他部署ににすることは、責任転嫁することにより自部署が責められるリスクを転嫁しているだけであり、プロジェクトのリスクは全く転嫁されていない。どこの部署が責任を取ろうが、そのリスクは発生するのである。このときに、「他部署の方が本件に精通しているから」と言って、リスク軽減を装って責任を転嫁するのは、サラリーマンの常套手段である(ただの私見)。

*2:勿論、これが自社にとって経験の少ないものである場合、導入・参画することのリスクも発生する。流行言葉が大好きな上層部がいると、リスクがチャンスを圧倒する事態になるのは言わずもがなである。